デザインの中でも特殊な世界

パーソナルブランドの最たるものとも言える「オリジナルサイン」は、デザインの中でも極めて特殊な分野であることをご理解頂くために.....

【サインの創作とは】
お客様の持つ社会的背景等の様々な前提条件を基に、命名されたお名前である固有の文字を、署名用にサイン化するということは、 単に簡略化だけに留まらず、それぞれ隣り合わせる文字の関連から生ずる、書きづらさを克服する為の自然な筆の流れ作りとバランスのとれた形状、本来の目的である唯一固有の占有意識醸成に欠くことのできない文字原型の視認性、更に深い印象を刻む意外性等を、僅か数筆の中に盛り込むという極めて複合的な作業となります。

試作段階においては幾通りかのラフが考案されますが、完了したすべてのデザインは一旦、チーフデザイナーの目に届く壁面に掛けられ、様々な観点から鑑賞、試し書きが繰り返され、微調整されながら、徐々に熟成させていくという行程を何度か繰り返し、この中から取捨選択を経て、いよいよ仕上げに進む一案が最終的に決定されます。
デザイナーとして納得のできる作品、ただ一点のみが完成品としてお届けできるものに仕上げられるのです。このことが、複数案を提示しその中から気に入ったものを選択して頂く提案方式をとることができず「納期の確約や修正」には応じられない理由の一つとなっているのです。

仕上げ作業が完了し、やっとお届けとなりますがお客様の評価というのは、なかなかつかみ所の難しい曖昧なものです。ご本人が初めて目にした瞬間に感じるもの、使い込んで感じるもの、他人の評価等々、いくつもの評価基準に晒されることとなりますが、良い作品とは使い込んで行く課程で自らが愛着を感じ、ご自身を表現する手段として気に入って頂けるかどうかによって、優れた作品かどうかという評価が下されるものです。

話は逸れますが、こんなエピソードをかつて読んだことが有ります。
ある人が小説を書き上げたのはいいけれども、できが気に入らず、引き出しにしまってしまいました。それを何年か経って読み直したら、悪くないように思い、出版社に送りつけたら出版が決まり、ベストセラーになったというのです。
評価というのは、それくらい曖昧なものです。
いくつもの出版社で断られた作品が最後に持ち込んだ出版社でベストセラーになった、というエピソードも世の中にはたくさんあります。
こんなことを書くと話が錯綜して混乱させてしまうかも知れませんが、要するに客観に近づく努力は当然のこととしても、いくつかの出版社、何人かの編集者の評価ですら客観そのものではない、ということなのです。
ただ、このベストセラー云々は、作品そのものの完成度はあっても、魅力が少ないと思われた場合のことです。未熟な作品、欠点のある作品、書き直したらよくなる作品では、このような現象は起きようがないことも事実です。

かくして、お客様が完成品として受け取ることとなる作品には、その時点で一定の評価を下さなければなりません。万一、お届けした作品がお気に召さなかった場合であっても、希望に沿うように作り替えたり、修正したりするためのエネルギーがデザイナーには残っていません。従ってこれ以上は相容れない趣味、趣向の違いとしてご勘弁頂く見返りとして、お気に召さなかった場合の支払いを免除させて頂くこととしているものです。

店主敬白
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